昨夜、兄からメールが来る。入院している父の容体が悪化している、と。
父はもう長くはない。妻や子供たちも合わせておいたほうがいいと思った。
今日、妻と娘を連れて、父のいる病院を訪れた。父は確実に弱っている。父に「娘をつれてきたよ。」と声をかけた。
「ああ、わかっている。」と父。「来てくれてありがとう。」とも。
娘は、変わり果てた姿に何を話してよいかわからない、という風だった。
私は父に語りかけた。「お父さん、この病院は、昔お父さんが住んでいたところの近くだね。昔住んでいたところに戻ってきたんだね。」と。この病院の近くに大きなお寺がある。子供の頃、家族で寒川神社まで初詣にいった帰りにそのお寺に寄ったことを思い出す。父にそのことを伝えた。
父は口を結んで、目は遠くを見つめた。そして、目には涙が滲んでいた。私はハンカチで涙を拭いてあげた。
昔のことを思い出していたのだろう。元気だった頃の自分の姿や家族に思いを馳せたのだろうか。
おだやかでやわらかい父の姿が、そこにあった。
父の姿をみて、「老いは必ずやってくる。今のときは、もう帰らない。後悔しないように、今を生きたい。」と強く思った。