2025年11月15日土曜日付毎日新聞の書評欄を読んで気になった本を書き留めた。
一冊目は、荒井和樹著「能力社会から共同体自治へ」(せせらぎ出版・1,980円)
著者は、生きづらさを抱える若者らの居場所づくりを続けるNPO法人「全国こども福祉センター」理事長。夜な夜な人気アニメキャラクターなどの着ぐるみを着て、そんな若者に声をかけて交流しているそうだ。
「仲間」として共に生きる「共同体自治」という概念を提唱している。お互いにありのままを受け入れることを目指す社会のことである。
いじめをきっかけに、不登校となった経験を持つ息子と、自律神経の病気で通信制の高校に通う娘を持つ親として、とても興味の惹かれる内容だ。色々な背景のある子供たちを受け入れる社会になってほしいし、まず自分がそういう大人になるように努力することが大事だと思う。家族のあり方を考える上でも、参考になるのではないかと感じた。
二冊目は、中尾佐助著「栽培植物と農耕の起源」(岩波新書・1,012円)
著者は「毎日食べている栽培植物こそが人々が何千年もの品種改良をへて獲得した文化財であり、そのゴールは正倉院ではなく私たちの胃袋である」と述べている。
また「流行を求めて食いつぶす消費文化の中にあって、文化は本来、ものを生み出す営みだ」と主張している。
”ものを生み出す営み”という主張は、とても共感できた。自分も日々の仕事や営みのなかから、なにかを生み出しているのに、その実感がない。自分はお客様に「感謝される仕事をしたい」と思っている。「ありがとう」という言葉に飢えているのかもしれない。日々を振り返り、自分のなしていること、これからなそうとすることを、ゆっくり考えてみたい。
選んだ2冊を振り返ると、「対話から生まれる共感と充実感」が心に響いたのだと思う。
毎日新聞の書評欄は、毎回、私の心に響く本が見つかるという印象だ。うまくいえないけれど、「心にやさしい・やわらかい」印象の本が選ばれている。これからも毎日新聞の書評欄を楽しみにしたい。
