「どうぞ」の先にあった涙

吉祥寺へ行った帰り、地元のショッピングモールに寄った。妻が買い物をしている間、私はモールの広場のベンチに腰を下ろした。夕方で、たまたま空いていたベンチに座れて一息つく。スマホを開いてたまったメールを削除する。

ふと、眼の前を見ると、70〜80代の女性が杖をついて柱に寄りかかって立っていた。ベンチは満席だ。花がらの杖に寄りかかるよう支所在なさげにしている。

私は立ち上がり、その女性に近づき、「席へどうぞ」と声かけた。女性は戸惑いながら、「いいえ、そのまま座ってください」という。誰も席を譲らないなか、突然の好意に驚いているようであった。

私の表情が硬かったと思い、笑顔をつくり、「妻ももうすぐ来ますから、私はもうすぐここを離れるので大丈夫です」と話して、ベンチに座るようにうながした。

再三固辞していた女性は、目にうっすら涙を浮かべて笑顔で「ありがとう」といってくれた。

涙を浮かべてまで喜んでくれるとは思わなかった。よいことをしたな、とうれしくなった。「一日一善」という言葉が頭に浮かんだ。善い行為をすると、心も澄んでくる。これからもちょっとした善い行為を続けていきたい。

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